• 商業通信コラム

「ハイブリッドワーク=スペース縮小」ではない!?いま求められるオフィスとは?

「一人当たりのオフィススペース」は、新型コロナウイルスのパンデミック以前から縮小傾向でしたが、パンデミックを経てフレキシブルな働き方が浸透した今、以前にも増して急速に縮小している一方で、従業員の働き方の変化を受けて、単に一人当たりある一定のスペースを与えればいいという考え方は、今や適切ではなくなってきました。多様なオフィス形態が増えていく中、企業の将来性を重視した新しいオフィスの在り方に注目が集まっています。

 

一人当たりのオフィススペースの減少

商業不動産サービス会社大手Cushman & Wakefieldの推計(2023年)によると、オフィススペースの空室は全米で10億平方フィートを超え、空室率はパンデミック直前の13%から19.4%に増加しています。その結果、「一人当たりのオフィススペース」も減少しており、商業不動産マーケットデータ会社のCoStarによると同スペースはこの4年間で8%減少し、過去約20年間で最低水準となっています。

 

新しいオフィスの役割

全世界に計3億5千万平方フィートに上るオフィスを所有する65社を対象に、CBRE(商業不動産大手企業)が実施した調査によると、昨年ハイブリッド勤務を採用した企業は約90%にも上ることが分かりました。

また、リモート勤務が可能な従業員約2万人を対象に米コンサルティング会社のGallupが行った2023年5月の調査によると、53%がハイブリッド勤務、25%が完全リモート、22%がオフィス勤務となりました。将来好ましい勤務スタイルについては、最も多かったのはハイブリッド勤務(59%)、リモート勤務が34%と、現在の勤務スタイルよりも増加しています。反対に、オフィス勤務を好む人は6%と、現在のオフィス勤務割合よりも低いことから、今後もフレキシブルな働き方が主流となっていくと見られています。

こうした主流を見据えて、「ただ単に従業員の数でオフィスの大きさや在り方が決まるという従来の考え方はもう古い」と、CBREのOccupancy Management部グローバルリーダーのスーザン・ワスマンド氏は指摘しています。「オフィスの方針と従業員の働き方の両方をうまく組み合わせることが鍵です。商業不動産のリーダーがオフィスの出勤状況やスペースの利用状況を理解することに重点を置いているのは、こうした理由からです」と述べています。

オフィスは、従来のように単に従業員一人に一つの机を提供し仕事をしてもらう場ではもはやないようです。では、オフィスという存在はどのような価値を提供できるのでしょうか。企業が完全在宅勤務ではなくオフィスでの勤務も必要だと考えている理由は、共有スペースでのコミュニケーション、コラボレーション、社員間の交流を重要視しているからです。Zoom会議だけではなかなか促進できません。これらを受けて、快適に作業ができるようオープンな会議室、今までにない環境でイマジネーションを促すアウトドアスペース、カフェのようにくつろげる雰囲気のラウンジなど、共有スペースの充実化を図る企業が増えています。また同時に、集中作業スペース(ウェブ面談用小会議室やフォンブース含む)の確保も重要で、社員一人一人が「その日、その時の業務やニーズに合わせて働けるオフィス環境の実現」が付加価値の高いオフィスを実現するキーとなります。

将来の成長性も考慮したオフィスプランニング

昨今のオフィスでは、会議室の利用頻度が日によって大きく異なるため、利用頻度が高くても対応できるよう十分な会議室を自社で準備するのではなく、ビル内のテナント用共有会議施設もうまく活用するケースも増えています。貸会議室だけではありませんが、このようなテナント向けアメニティの有無が、移転時におけるオフィスビル選択の重要項目の一つとなりつつあります。コロナ禍が過去となり、日本や他拠点からの出張者数も戻り(もしくは増加傾向にあり)、訪問者用の余剰スペースを確保するケースも増えてきています。また、オフィス契約期間内でのビジネス拡張あるいは人員増強の計画を視野に入れることもオフィス選びにおいて重要です。

新しいオフィスを検討する際には、現オフィスで各スペースがどのように活用されているか、また今後どのように活用したいかなどの社員調査・アンケートは是非実施していただきたいです。同じ面積であったとしてもオフィスの形状によって従業員の収容可能人数が変わることもあります。事前にレイアウトのテストフィットなどを有効活用し大まかな目安を理解し、また併せて将来の使い方も予め見越しておくなど、入居された後で「席が足りない!会議室が足りない!」とならない慎重な計画をお勧めします。

「うちのオフィスの規模はどのくらいが適切ですか」というご相談も大歓迎です!貴社にとってより良いオフィス造りを一緒に考えていきましょう。リダック商業部にお気軽にご相談ください。