米国不動産市場で活路を見出す日本企業
近年、日本企業による商業動産への投資が活発化しており、投資先は複合施設や物流倉庫の開発など多岐にわたっています。また、大手住宅メーカー各社も米国市場への進出を加速させています。 特に人口増加が見られる米国南部での事業拡大が顕著となっています。まずは、いまなぜ米国市場なのか見ていきましょう。
なぜ米国市場?
日本資本による米国投資は、円安や米ドルの影響により外国投資リスクが高まるほか、将来の収益を円換算する際の為替変動リスクを伴う「難しい環境」での投資です。
それでも日本企業が米不動産市場への投資を拡大させている理由に、日本での人口減少による住宅市場縮小が挙げられます。米国は人口増加や移民の流入を背景に、住宅需要は増加し、住宅不足が慢性化している州・地域があります。特に気候が温暖で低コストな生活水準を求めて人口増加が見られるアリゾナ州やテキサス州などの「サンベルト」地域(一般的に北緯37度線以南の地域一帯を指す )では住宅需要が高まりつつあります。
日本の大手住宅メーカーである積水ハウス社の取締役兼専務執行役員の石井徹氏は「人口が減少しつつある日本と比べると、米国市場の規模と潜在力は非常に魅力的です。」と話しており、人口増加は投資理由の大きな要素とみているようです。
また、日本では借入コストが低いため、日本企業は他国の競合他社を上回る入札ができるという優位性を備えていることも、米国投資を加速させている要因となっています。
日本の大手住宅メーカーによる投資
近年、日本の住宅メーカーは米住宅建設市場において存在感を高めており、現在では、約6%のシェアを占めるまでになりました。こうした中、米住宅メーカーの買収や住宅開発は一段と活発化しています。特に2020年以降、米住宅建設会社の買収は23件に達し、これはそれ以前の7年間での買収件数の2倍以上に相当します。さらに、この流れの中で、集合住宅開発業者や資材供給会社の買収も相次いでいます。
その一部をご紹介します。日本の大手住宅メーカーである住友林業社は今年2月、米住宅大手Tri Pointe Homes(ネバダ州)を45億ドルで買収すると公表しました。この買収により両社合算の住宅供給戸数は年間約18,000戸規模となり、全米5位相当の規模 となります。また、2030年までに米国内の住宅供給戸数23,000戸を目指しています。米テキサス州とカリフォルニア州で集合住宅の開発事業を行う JPI(テキサス州アービングに)の買収に加え、Tri Pointe Homesの買収で、さらに米南部での事業拡大に力を入れています。
積水ハウス社は2024年に米住宅大手M.D.C. Holdings(MDC、コロラド州デンバー)を買収しました。米住宅建設会社であるWoodside Homes、Holt Homes、Chesmar Homes 及び Hubble Group に MDCを加え、米南部のアリゾナ州やテキサス州などを含む16 州で良質な戸建住宅の供給体制を強化しています。
住宅以外の成長分野への投資
日本企業による投資は、住宅以外の分野にも広がりを見せています。
①森トラスト社の「35ハドソンヤード」 取得
CoStarなどの報道によると 、同社は2025年、マンハッタンの大規模複合ビル「35ハドソンヤード」 (1階〜38階部分まで)を取得しました。取得したフロアには、 「エクイノックス・ホテル」やオフィス、リテールが含まれます。 マンハッタン屈指の立地であるハドソンヤードはオフィス・観光エリアで、多くの利用客が見込まれています。
②三井不動産の「Maple Terrace」建設
三井不動産社は昨年3月、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスに次ぐ4番目の支店をテキサス州ダラス市に設立し、米国南部での事業拡大に乗り出しました。ダラスは、オフィスや高級賃貸住宅 ホテルなども数多く存在する人気のアップタウンで、全世界で不動産事業を展開する大手総合デベロッパーのHines(テキサス州ヒューストン)と共に大規模複合ビル「Maple Terrace」を建設しました。賃貸住宅およびオフィス、商業施設などで構成されています。
同社は物流倉庫開発にも力を入れています。最大5億ドルの出資枠を設け、現地のディベロッパーとの共同開発で、カリフォルニア州の倉庫2物件の開発に乗り出しています。米国内では人口増加や電子商取引(EC)の拡大で、倉庫需要が増加しています。
③ 大和ハウス社の「Blue Ridge Commerce Center」建設
大和ハウス社は2025年8月、ラメル・クロウ・カンパニー(TCC)との共同開発で、テキサス州ヒューストン南西部に大規模なマルチテナント型物流施設 「Blue Ridge Commerce Center 」を開発 しました。92エーカーの敷地に5棟の平屋建てで、総延床面積約135万平方フィートに上ります。 空路、陸路、海路のいずれの拠点にもアクセスが良い場所に位置しています。商業および住宅地、周辺市街地への接続にも優れている立地を活かし、ヘルスケアやエネルギーなど多様な産業に対応可能な物流施設となっています。
④三井住友銀行(SMBC)の第2拠点地開設
SMBCは今年4月、米国の第2本社をノースカロライナ州シャーロットに開設する計画を発表しました。「SMBCが米国において成長を続ける中、シャーロットは当社にとって、長期的な視点から投資を行う上で極めて魅力的な立地です」と、SMBC Americas のCEOである大塚洋文氏は 述べています。同社は、在米日系企業向けサービスに加え、投資銀行機能などを強化する意向です。 米国ではデータセンターやClass A資産への投資が伸びており、今後の事業機会として注目されています。
最後に
経済情勢の見通しがつかない中でも、日系企業による米国への投資が拡大しており、投資対象も住宅のみならず、物流施設やデータセンターなどの成長分野へと広がりつつあります。日本企業による投資活動は、オフィスを含む商業不動産市場に与える影響がより強まっていくものと見られています。
参考文献
- The New York Post(3/31/2026)
Japan now controls 6% of U.S. homebuilding – and it wants to keep expanding - The Real Deal(2/23/2026 )
Sumitomo Forestry gets California regulatory approval in $5B deal for Tri Pointe Homes - The Real Deal(3/31/2026)
Japanese homebuilders increase U.S. foothold - 積水ハウス IR資料(4/19/2024)
D.C. Holdings買収関連資料 - CoStar News(11/19/2025 )
Mori Trust acquires portion of 35 Hudson Yards - CoStar News(3/26/2025 )
High-profile development brings new life to Dallas site where celebrities such as Elvis once lived - 三井不動産2025 News Release(3/25/2025)
- 三井不動産 | 当社初となる米国物流施設事業に参画(3/4/2024)
- 三井不動産、米国で物流倉庫開発 最大750億円投資 – 日本経済新聞(3/4/2024)
- CoStar News (9/16/2025)
One of Japan’s biggest homebuilders completes its first US industrial hub - 大和ハウス工業株式会社ニュースレター(09/05/2025)
- CoStar News (4/8/2026)
Japanese banking giant picks Charlotte, North Carolina, for second US headquarters - JETRO ビジネス短信(4/10/2026)
SMBC米国拠点戦略




